1990 年 52 巻 6 号 p. 1251-1259
T. sergentiの赤内型原虫の分裂様式について光顕的および電顕的観察を行った. 赤内型原虫は単一の核を有し, 細胞質にはリボゾーム, クリステのないミトコンドリア, 細胞口および食胞が認められ, 形態的に栄養型trophozoite stageと見なされた. 末梢血中に観察される赤内型原虫は, ほとんどのものが, この形態を有し, まれにrhoptry, small electron dense bodyおよびelectron dense cisternaeを有する原虫が観察され, これは形態的に感染型のmerozoite stageと考えられた. T. sergentiの赤内型原虫は主経路である四つの娘細胞をつくるschizogonyにより, あるいは副経路である二分裂によって増殖し, いずれの分裂経路においても娘細胞はmerozoiteであった. このことからT. sergenyiは末梢血内でschizogonyあるいは二分裂によって増殖し, 娘細胞はmerozoiteに分化し, 赤血球への感染性を有するようになることが示唆された.