抄録
Bordetella bronchiseptica毒素産生性Pasteurella multocide D型の相互作用をSPF子豚各4頭からなる5群について調べた. 3群と4群の子豚は生後28日目に, 両側の鼻腔内にB. bronchiseptica 1相菌の皮膚壊死毒(DNT)非産生株の1013CFUを接種した. 1群と3群の子豚は,B. bronchisepticaの毒素非産生株の超音波抽出液を経鼻的に, 2群および4群の子豚は, B. bronchisepticaのDNTを左側鼻腔内に接種した. 超音波抽出液とDNTの処理は生後33日目から始めて5日間続けた. 5群は対照とした. 37日齢で, 5群を除く全群の子豚に毒素産生性P. multocidaの5×107CFUを両側の鼻腔内に接種した. 50日齢のと殺時に, 2群の3頭と4群の全頭の左側の鼻腔からP. multocidaが回収された. b. bronchiseptica DNT接種子豚では, 左側鼻腔の粘膜上皮は, 繊毛の消失と空胞化, 核濃縮と壊死のような退行性病変が認められ, また上皮の肥大, 上皮や粘膜下組織には炎症細胞の浸潤も認められた. この結果は, B. bronchiseptica DNTの鼻粘膜に対する作用は, P. multocidaの鼻腔内における発育の前提条件であることを示唆している. p. multocida定着は他の病毒因子の関与なしにB. bronchiseptica DNTそのものによる粘膜の傷害の存在が前提であることが明らかとなった.