1992 年 54 巻 6 号 p. 1117-1124
卵巣除去マウスの腹鼠径部第1乳腺と血管の発達に及ぼすエストロジェン(E)およびプロジェステロン(P)投与の影響を形態計測, 光顕および電顕を用いて検索した. 乳腺のfat padの面積は各実験群間で差はなかったが, 実質の面積はE+P投与群で最大であった. 乳腺に分布する深腸骨回旋ならびに浅後腹壁動・静脈の径はE+P投与群で最大で, また, 導管やbudを取り囲む毛細血管もE+P投与群で最も密に分布していた. 間質の脂肪細胞は主要血管の周囲にmultilocular型が, それ以外の部位にunilocular型がみられるが, EおよびE+P投与群ではunilocular型がほとんど全域を占めていた. 従って, 乳腺脂肪組織は実質の発達のベースになることが示唆された. 電顕所見でも, E+P投与群で最も顕著な所見がみられた. 即ち, 実質の上皮細胞は多数のミトコンドリアやリボゾーム, よく発達したゴルジ装置やrER, および大きな脂質小滴をもち, また毛細血管内皮細胞は, 多数の飲小胞, 長い辺縁ヒダおよび微絨毛様突起をもっていた. 以上の観察から, 卵巣除去マウスへのE+Pの投与によって乳腺および血管の発達が引き起こされることが明らかとなった.