Journal of Veterinary Medical Science
Online ISSN : 1347-7439
Print ISSN : 0916-7250
ISSN-L : 0916-7250
Slc: Wistarラットにおける視覚路の下行性及び上行性変性を伴う視神経の一側性萎縮
渋谷 一元田島 正典山手 丈至
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 55 巻 6 号 p. 905-912

詳細
抄録

視神経の一側性変性萎縮がSlc: Wistarラットの雄80匹中6匹及び雌80匹中4匹に発生した. これらのうち2匹では頭蓋内部の一側の視神経が完全に消失し, 他の症例の一側の視神経は萎縮していた. 頭蓋内の視神経消失を示した2匹のラットの視神経乳頭及び視神経は, 組織学的に眼球後極部に認められた. 視神経病変は, 軸索の減数, 髄鞘崩壊及び著明なアストログリオーシスにより特徴づけられた. これらの視神経には軸索の膨化, 断裂及びスフェロイドの形成, ならびに結合組織性鞘膜及び血管壁の肥厚がみられた. 萎縮視神経の対側の視交叉の片側部分及び視索は縮小, 変性し, グリオーシスを伴っていた. 網膜の限局性あるいはび漫性の変性が萎縮視神経をもつ眼球に観察された. 網膜神経節細胞は減少し, 色質融解を示した. これらの網膜は薄くなり, 内及び外層両者が変性し, 網膜血管の硬化性変化を伴っていた. 萎縮視神経をもつ眼球の眼動脈及び毛様動脈には増殖性あるいは閉塞性動脈内膜炎がしばしばみられ, 網膜病変が視神経の軸索変性によるのみではなく乏血によっても引き起こされたことが示唆された. 超シナプス変性を示唆するような組織学的病変が対側の外側膝状体及び前丘に認められた. これらの結果から, 循環障害によって視神経に原発病変が引き起こされ, ついで視覚路の下行性及び上行性変性が発現したものと推測された.

著者関連情報
© 社団法人 日本獣医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top