2021 年 41 巻 162 号 p. 29-30
本稿では,航空機設計における専門家の設計判断に関する知識を抽出・可視化する新しい設計情報学的アプローチを紹介する.宇宙航空研究開発機構にて開発された静粛超音速研究機の設計案データを用いて,開発中に検討された58個の設計案の中から専門家が最終的に採用した設計をシステマティックに抽出・可視化することを試みる.位相的データ解析の代表的手法であるMapperを用いて,空力・構造の多分野融合最適化に潜む4次元的なトレードオフ関係を有向グラフとして可視化する.専門家が採用した設計は,本手法においてパレートフロントのニーポイントの1つとして抽出された.これにより,専門家による総合的かつ複雑な判断を経て選ばれる設計案を本手法によってシステマティックに提示できる可能性が示唆された.