西日本畜産学会報
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琉球在来豚アグー精子における冷却処理前の室温放置が凍結融解後の精子性状に及ぼす影響
吉元 哲兵仲村 敏渡慶 次功仲田 正建本 秀樹
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2007 年 50 巻 p. 35-42

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抄録

希少な琉球在来豚アグーの効率的増殖には, 良好な精子を常時供給できる凍結保存技術の確立が不可欠である.そこで, 本研究では, 一般的にブタ精子の低温障害に対する抵抗性の向上に関わるとされる冷却処理前の室温放置が, 凍結融解アグー精子の性状 (細胞膜障害, 先体のタンパク質分解酵素活性, 精子運動性ならびに精子受精能力) に影響を及ぼすか否かを検討した.アグー4頭とランドレース2頭から射出精液を採取し, 直ちに精漿を取り除きBTSに懸濁した精子を0, 1および2時間室温で放置した後, 凍結用希釈液による錠剤化凍結処理を行った.その結果, 室温放置時間を設けず凍結したアグー精子では, 融解後の先体タンパク質分解酵素活性, 運動精子率, 活性化型前進運動精子率さらには体外受精による精子侵入率が室温放置を行った精子に比べて有意に高値を示し, 逆に細胞膜障害性を示す精子は有意に減少した.一方, ランドレース精子では, 室温放置時間の違いがアグー精子ほど凍結融解後の精子性状に影響を及ぼすことはなかった.したがって, ランドレース精子とは異なりアグー精子の凍結保存時には, 採精後, 速やかに冷却・凍結処理を開始する方法が有効であると結論された.

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© 日本暖地畜産学会
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