水資源・環境研究
Online ISSN : 1883-9398
Print ISSN : 0913-8277
ISSN-L : 0913-8277
論説
水道広域化の動向と事業構造の再編
太田 正
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 25 巻 1 号 p. 24-36

詳細
抄録

 1977年に制度化された水道広域化は、広域的水道整備計画の前提的諸条件が崩れ、その相当数が改定されないままにある。そこで登場したのが新たな広域化であり、施設統合を必須要件とせずに事業統合を認め、政策目的も運営基盤の強化という内部経営的要素の強いものへと転換した。だが、事業統合の経済的メリットは、自動的に生じるものではなく、また、水需要の減退傾向から規模縮小を含むシステム全体の再構築を図ることが重要であり、そうした視点や計画を持たない限り経済的メリットの実現は難しい。水道の事業統合と電力の構造分離とは、「統合」と「分離」という到達点の位置が異なるだけではなく、地域独占と市場構造に対する基準原理が大きく異なる。水道の場合には、民営化に否定的であるが民間委託は急速に浸透しており、公営体制下における内なる市場化が推進されている。しかし、構造分離が掲げる料金の引き下げと消費者選択の拡大に対し、水道として、これにいかに応ずるかが問われる。

著者関連情報
© 水資源・環境学会
前の記事 次の記事
feedback
Top