抄録
琵琶湖に残存する希少な内湖で、近江八幡市にある西の湖を自然再生の一つの研究事例として選定した。そして、自然再生ガバナンスの有効な実施プロセスづくりや、将来継承を見通す合意形成には、多様なステークホルダーの一員である、内湖社会圏の地域住民の意識構造が重要な要素になると考え、2011年にフォーカス・グループ・インタビュー調査および地域住民327名を対象としたアンケート調査を実施した。分析結果より、将来の西の湖シナリオに対する意見の違いは、「伝統回帰環境志向」、「観光地志向」、「地元公園志向」の3つの軸に集約できることが分かった。また、西の湖に対して回答者が抱く将来シナリオは、回答者の職業との間に相関があることも確認された。地域住民は、将来シナリオ「魚のゆりかごとしての西の湖」を共有概念とするガバナンスの下で自然再生にむけた合意形成に協力しうることが示唆された。