抄録
京都府における名水の研究は京都市を中心に行われており、京都市北西部に接する亀岡盆地の名水に関する研究は行われていない。本研究では、名水に関する文献が豊富な亀岡市域を対象に、「自然環境」、「故事来歴」、「水質と安定同位体」に関する分析を行い、亀岡市域の名水の特徴について人文科学と自然科学の視点から考察した。故事来歴については、室町期以前は都との関係の中で名水が生まれてきたが、江戸期では暮らしに必要な水が名水として位置付けられている。近年、名水は地域資源としてまちづくりや観光にも活用されている。
名水は民俗学的、自然科学的研究が先行しているものの、その利用法と水質との有機的な関係は明らかではない。そこで本研究においても一般水質と安定同位体について分析し、ECやpH、水質組成、安定同位体比などで特徴のある地下水を見出すことができ、地質や滞留時間の長さ等の影響などを受けて水質が形成されていることが明らかとなった。また、一部の名水には、その水質に基づいたと考えられる水利用が行われていることが明らかとなった。