抄録
水環境をめぐる自然体験の豊富な世代が年齢を重ねていく中にあって、水環境を保全する活動をどのように継承していくかは、重要な課題となっている。本稿では、滋賀県守山市のNPO法人「びわこ豊穣の郷」を事例として、会員アンケート調査の結果をもとに、会員を水環境をめぐる自然体験が豊富な層と希薄な層に区分し、それぞれにどのような特性を有し、どのような人たちが活動に参加しているかを明らかにすることを課題とする。
会員アンケート調査について分析を行った結果、「びわこ豊穣の郷」においては、水環境をめぐる自然体験が豊富な層では、高齢層の割合が高くなっており、希薄な層では、より若い世代の割合が高くなっていた。水環境をめぐる自然体験が希薄な層のうち活動参加層では、入会理由において「ホタルなど水辺の生き物への関心」が高くなっており、社会的ネットワークが比較的豊富になっていた。水環境をめぐる自然体験が希薄な層に対しては、身近な水路や河川等で生き物と触れ合える活動を積極的に展開し、情報発信を行っていくことや、子育て世代のネットワークを通じて、活動の輪を広げていくことが有効であろう。