抄録
本稿は、福島県双葉郡川内村沢集落の山の神水道を事例として、水道法適用外の小規模水道が地域住民にとってどのような存在であるのかを明らかにした。従来の小規模水供給システム研究は、持続可能な管理条件や技術・制度的課題を中心に論じてきた。それに対し本稿は、小規模水道を維持する人びとが、それをいかなる価値をもつ存在として意味づけているのかに注目した。川内村では過疎化と原発事故の影響を受け、地域行事や生活組織が簡略化・解散されるなかで、水は生存と生活に欠かせない資源であるがゆえに、水道組合は住民が水の管理を通じてかかわり続ける社会関係の回路として意味づけられてきた。小規模水道の将来像を考える際には、水源や施設の維持・代替だけでなく、水をめぐって形成されてきた社会関係をどのように継承するのかが問われる。本稿は、小規模水道が水を供給する生活インフラであると同時に、社会関係のインフラでもあることを示した。