本稿が課題とするのは、環境法が保全しようとしている対象を公共財という観点から把握することにある。まず、基本的には経済学の議論に属する公共財の定義が、どのように構成されるかが立論にとって重要であるが、ここでは国家目的に関連した価値的な視点からの定義を出発点としている。こうした国家目的は歴史的に社会の変動とともに変化するのであって、国家は社会の変化に相関的である。近代の自由国家は取引社会に、社会国家は産業社会に対応する。また、このような視点からは、国家目的に応じた国家形態の変遷に応じて、公共財も変化することになる。現在はリスク社会に対応した環境国家が要請されるが、そこではそれに対応した公共財が保護の対象となるのであって、環境メディアである水、空気、土地はその汚染されない状態において公共財となる。