1988 年 1988 巻 2 号 p. 1-14
かって,一筋の流れを共にする村落群の間における用水関係では,その最上流に位置する村落が「水上村」或は「水元村」として下流の村落に対し特権的,支配的な地位を占めていた。この「水上村」が草刈場の入会権をめぐり他村落と争訟を抱えていた,西近江,旧伊香立庄での場合には,そのような複雑な勢力関係の中にあったにも拘らず,一小村による用水支配が維持された実態を知ることができる。
その特権的な地位の淵源は,やはり最上流に位置しているという事実にあり,この点は他の諸事例からも確認されよう。このこと自体は,近世の領主制の下でも裁判を通して是認され,水利のルールとしては定着していたと言える。