抄録
急速な経済成長に伴う産業公害と都市への人口集中による生活公害問題が同時に発生している東南アジア地域での環境問題は、今、重大な時期を迎えている。今後21世紀に向かって世界経済の一つの核となることが確実視されているこの地域での環境改善への取り組みは、地球規模での環境問題にきわめて重要な意味を持つからである。
そこで本稿では、まず、環境問題に対して影響力を持つ国連諸機関のスタンスの違いを明らかにする。その上で地域での環境改善のポイントが地域レベルでの能力向上に依拠していることを示す。その内容は、地方公共団体の能力を向上させること、地域住民との連携を強化することであるが、この地域は社会的、技術的、財政的制約条件を抱えている。これらを考慮にいれた上での環境改善の方向性と可能性について触れてゆきたい。