抄録
本論説では、第1に、日本における現代「魚附林」研究および思想は環境科学の源流の一つであったと位置づけ、この視点から、札幌農学校水産学科・東北帝國大学農科大学水産学科・北海道帝國大学附属水産専門部教授であった海藻学者・遠藤吉三郎(1874~1921)、北海道帝國大学農学部・理学部教授で函館水産専門学校校長を歴任した動物学者・犬飼哲夫(1897~1989)、北海道林務部職員・北海道立林業試験場特別研究員であった三浦正幸(1913~1985)、文学者の大滝重直(1910~1990)などの研究や言説の系譜および社会への影響を整理し位置づける。第2に、日本の明治時代以降の「磯焼け」に関する研究史の系譜を、「魚附林」研究および思想の展開の一部として整理する。第3に、上の「魚附林」研究および思想の影響を受けつつ進められた漁業者たちの植林活動の取組(「お魚を殖やす植樹運動」、「森は海の恋人」など)およびそれが行政に与えた影響を整理する。