抄録
地域開発の際に住民参加を謳うことが一般化している。住民参加とは住民の意向を事業に反映させるだけでなく、住民自身の労働や知恵の提供、あるいは意思決定などオーナーシップの発揮を意味する。本稿では、住民参加によって農業用溜池を整備し、コミュニティ再生を図ろうという大阪府熊取町長池地区の意義と課題を分析した。この事例は大阪府溜池オァシス構想のモデルに位置づけられている。というのは、計画段階からの長期にわたる住民参加が実現されてきたからである。この過程は工事以前のワークショップによる計画作りの時期と地区全体への計画浸透を図る時期に区分される。そうした周到な準備があっても、アンケート調査によると溜池整備事業は住民の問に十分浸透していない。そこで、住民参加型開発には住民の自覚と意欲、力量の向上に加えて、役員層に続く初期適応者の役割に注目する必要がある。