抄録
近年増加の傾向にあるレジャー用動力船の多くは、2ストロークエンジンを使用しており、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンや、メチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)、多環芳香族炭化水素(PAH)等の化学物質を水中に排出するとされる。本稿ではまず、水上オートバイを例に、これまでの研究について概観および検討した。その結果、改良型の直接噴射式エンジンは決定的な排出削減とはならないが、4ストロークエンジンはかなり排出を減らすといわれており、有効であることがわかった。この他の対策としては、走行区域・隻数・時間等の制限、あるいは動力船の使用禁止が考えられる。消極的な対策としては、飲料水の取水口付近での航行を禁止すること、取水口の位置を深くすること、また塩素処理を行っているところではそれを止めて、オゾン処理等に切り替えることなどが考えられる。最後に、今後望まれる調査ならびに対策について議論した。