抄録
この論説は、2002年6月1日に水資源・環境学会第18回大会で、筆者が発表した「生活史的にみた下水道技術の誤謬」を改題したものである。現在、あらゆる領野で構造改革の必要性が論じられている。このためには関連する歴史を再検討することが欠かせない。生活とは、「物質・エネルギー・情報を介した人間行動と環境との交流」と定義でき、これら3要素のいずれの特性も備えている水は、人間の生活様式に影響する最重要因子と位置づけられる。ここではまず、筆者が直接・間接に経験した水関連技術の変遷から、批判的立場での年表を作成し、これを解説するという方法で論述を進めた。主な内容は、技術組織の問題点の抽出、遠距離輸送にもとつく大量水使用の誤りの指摘を含め、水文明の大転換の必要性である。