2013 年 39 巻 2 号 p. 86-90
試料をコーティングせずにそのまま観察・分析できるLVSEM-EDX の利点に着目し, CUAZ 注入処理材に生じる銅の溶脱過程を可視化できるかどうか検証した。すなわち, CUAZ を注入したスギ辺材を水で溶脱操作させながら, 銅の濃度分布の変化を, 木口面の側から同一視野で繰り返し観察した。溶脱操作前の段階では, 試験片側面に近い場所程銅の濃度が高くなる傾向が認められ, 溶脱操作を1回おこなうと観察面における銅の濃度が全体的に上昇し, 特に晩材部に銅が蓄積することが分かった。溶脱操作を10回繰り返すと, 試料表面の銅の濃度は下がる傾向を示した。一方, 晩材部の銅の濃度は比較的高いまま維持し, 濃度分布に関しては溶脱操作前と異なった。以上の結果から, 同一視野で繰り返し観察したことにより, 銅の溶脱過程を可視化して動的に追跡することが可能となり, LVSEM-EDXは, 薬剤溶脱のメカニズムを解明する上で, 有用なツールであることが分かった。