抄録
長野県御代田町の街路樹 (ソメイヨシノ) 3本から, 生長錘を用いてコアサンプルを採取し, それを約3cm 毎に6分割した後, それぞれの部位からゲノムDNA を抽出した。得られたゲノムDNA を鋳型にしたPCR により担子菌に由来するITS 領域の増幅を行い, 担子菌の存在を確認した。ここで得られた増幅産物を変性剤濃度勾配ゲル電気泳動解析に供したところ, 複数の担子菌が同定されたが, 特に全ての樹木からベッコウタケが検出されたことから, 採取地周辺ではソメイヨシノの腐朽菌としてベッコウタケが優先種であることが示唆された。また, コアサンプルの部位によって, 検出される菌種に差異が観察されたことから, サクラの樹幹内において菌類は局在性を呈していることが示唆された。