抄録
ナフテン酸銅及びナフテン酸亜鉛は優れた防腐,防蟻効力を有し,低毒性の木材保存剤として古くから使用されてきた。これらナフテン酸金属塩は従来油溶性薬剤として使用されてきたが,作業性,経済性等に問題がある。一方では,ひ素,クロム化合物を含まない加圧注入用薬剤の関心が高い。
著者らは新しい加圧注入用薬剤の開発に関する一連の研究で,ナフテン酸金属塩の超微粒子水分散型乳化剤(商品名:トヨゾールCU及びトヨゾールZN)に着目し,その加圧注入用薬剤としての実用性について検討した。
試験は,JWPA及びJIS規格による各種性能,加圧注入性及び薬液の安定性について行った。
結果の要約は下記の通りである。
1. JWPA規格及びJIS規格に準じて行った防腐効力試験,防蟻効力試験,鉄腐食性,吸湿性試験,及び2年間の野外防蟻試験の結果,供試濃度の範囲ではそれぞれの規格に定められた性能基準に適合した。
2.加圧注入試験の結果,トヨゾールCUの薬液吸収量は209~460kg/m3,トヨゾールZNは116~336kg/m3であり,これらの吸収量は防腐・防蟻効力を示すに必要な量であった。各測定値はCCAの値と同様であり,従来の加圧設備と条件で実用可能であることがわかった。
3.薬液の安定性試験では,特に鉄イオン,木粉の影響を検討したが,薬液の安定性は良好であった。
4.処理材及び薬液中の有効成分量は,原子吸光分析法により迅速で簡単に定量できた。また,処理部分はジチゾンの0.1%トリクロルエチレン指定薬により簡単に呈色判別できた。
以上の結果より,トヨゾールCU及びトヨゾールZNは加圧注入用木材防腐・防蟻剤として実用可能であることがわかった。