抄録
「ティシュペーパー」は身近なものであるがゆえに犯罪においても多々遺留され鑑識においてその異同識別が重要となる。本報ではティシュペーパーの各メーカー品について箱の中の紙の種類および販売地域による特徴を比較した結果を述べる。
3地域で購入した13銘柄のティシュペーパーを検討の対象とした。いずれも2枚重ねのもので, それぞれ1枚ずつに剥がし, 反射画像とその2次元高速フーリエ変換を施したパワースペクトル (以下PSと略す) 図から異同識別を試みた。
13銘柄の箱入りティシュペーパーに含まれる紙は, 10種類に分類できた。異なる種類の紙が2枚重ねになっているものはなかった。しかし2枚重ねティシュペーパーを作るためには二つのロール紙を重ねて再度巻き取っているため常に同じ種類のものが組み合わされるとは限らない。したがって2枚を剥がして検査することが必要である。また一つの箱の中には, 1種類の紙が入っているものもあれば, 複数種類入っているものもあり, 一つの箱の中といっても複数の種類の紙が入っているものがあることがわかった。検査の際には箱の中の全ての紙を検査する方が望ましい。購入地域を変えても同じ銘柄のものには同じPS図を示すものが多く, ある程度の銘柄を推定することができるが, 銘柄が異なるもの同士でも同じPS図を示すものが認められたため銘柄の特徴を把握しておく必要があると考えられる。