抄録
樹高13 m,樹齢35年のコシアブラの単一樹幹を用いて,断面高別に平均道管要素長(VEL),孔圏部の平均道管径(VDe),年輪中央部の平均道管径(VD),横断面 1 mm2 における道管の数(VNb),平均放射組織面積(RA),平均放射組織高さ(RH),平均放射組織幅(RW),接線断面 1 mm2 における放射組織の数(RNb)の髄からの年輪番号の増大に伴う変動パターンを断面高別に7枚の円板で調べ,ゴンペルツ関数をあてはめて求めた樹高成長関数をもとに各年輪形成時の樹幹先端からの距離を推定することで,髄からの年輪数と樹幹先端からの距離の増大に伴う各要素の変動パターンを解析した。その結果,VEL,VDでは樹幹先端からの距離が近似する場合に断面高ごとの値がほぼ同じであったのに対して,RA,RH,RW,RNbでは,ある年輪以降で年輪番号が同じである場合に断面高ごとの値がほぼ同じであった。これらのことから,VEL. VDは樹幹先端からの影響を,RA,RH,RWは形成層齢の影響をそれぞれ強く受けていることが示唆された。