木材学会誌
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一般論文
リン脂質脂肪酸分析法を用いた森林内での木材腐朽過程における微生物群集構造変化の推定
松下 美歩羽藤 綾美目黒 貞利
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2008 年 54 巻 5 号 p. 289-298

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抄録
土壌微生物群集構造の解析に広く用いられているリン脂質脂肪酸(PLFA)分析法を木材の腐朽過程に応用し,スギ林または広葉樹林でのスギ及びコナラ供試材の分解にともなう微生物群集構造の変化について比較検討した。クラスター分析の結果,PLFA組成に基づく微生物群集構造は試験地の植生に関わらず,埋土した供試材の樹種の違いによって2つのグループに分類された。コナラ材は,両植生共に埋土初期から真菌類指標の脂肪酸の割合が高く,腐朽期間が長くなるにつれグラム陽性菌指標の脂肪酸が増加する傾向が見られ,これら微生物グループのバイオマスと木材腐朽率の間には有意な正の相関が見られた。一方,スギ材では,腐朽の進行に伴って真菌,グラム陽性菌,放線菌などの指標脂肪酸の増加が見られたが,真菌類バイオマスと木材腐朽率との間には相関関係が認められず,スギ材の腐朽には細菌類や放線菌類の関与が比較的大きいものと推定された。
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© 2008 一般社団法人 日本木材学会
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