木材学会誌
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論文特集「温暖化防止に寄与する“木材”」
熱容量の異なる木質壁体の熱的特性に基づく住宅の省エネルギー効果
山崎 真理子平野 佳祐佐々木 康寿水谷 章夫崔 哲榊原 勝己
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2008 年 54 巻 6 号 p. 310-318

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抄録
地球温暖化対策の一つとして,炭素貯蔵機能を有する木材の利用と建物の省エネルギー性の向上は有効な手段である。本研究では,木造住宅の壁体構成が室内熱環境に及ぼす影響を調べ,省エネルギー効果を検証した。具体的には,構成が異なる3種類の木質壁体を対象に,それぞれの熱物性をJIS準拠試験と実験建物を用いた大型試験により調べた。さらに,建物の暖房時の消費電力を測定し,壁体構成が省エネルギー効果に及ぼす影響を検証した。得られた知見は次の通りである。1. 熱貫流率は,一般的な土壁>木材と土壁を複合させた壁体>断熱材を主とする壁体の順に大きい。2. エアコンの消費電力は,土壁住宅>木材・土複合壁体の住宅>断熱型住宅の順に大きく,この傾向は室内外温度差が大きくなるほど顕著に現れた。3. 断熱型住宅の場合には暖房消費電力/室内外温度差の比が概ね一定となった。一方,木材・土複合壁体の住宅および土壁住宅ではこの比が一定とならず,熱容量の影響が見受けられた。4. 木材・土壁複合壁体は土壁と比べて断熱性能が改善されており,これに伴い省エネルギー効果が認められた。
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© 2008 一般社団法人 日本木材学会
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