2021 年 54 巻 7 号 p. 361-367
症例は78歳女性.末期腎不全のためX-18年から血液維持透析を導入した.X-4年に右膿腎症のため,当院でメロペネム(MEPM)0.5 g/日による保存的加療を10日間行い軽快していた.しかし,X年に右膿腎症が再発したため入院した.前回入院時と同様に,MEPM 0.5 g/日による保存的加療を開始した.入院後,炎症所見の改善を認めたが,第11病日に両側眼囲に掻痒感を伴う紅斑が出現した.第13病日に紅斑が急速に体幹へと拡大したため同日当院皮膚科に紹介した.MEPMによる薬疹と診断され,MEPMを中止,抗アレルギー薬を開始した.しかし,皮疹はさらに増悪し,第15病日にびらん,水疱が出現,中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis: TEN)と診断された.ステロイドパルスを施行したが,表皮の壊死を全身に認めた.第19病日に透析困難となり,第21病日に永眠された.TENは非常に稀な,死亡率が約30%の最重症薬疹であり,透析患者に発症した場合予後不良である.