2011 年 57 巻 3 号 p. 178-185
木材の3次元成形技術は国産針葉樹材の利用拡大および,プラスチック代替資源としての木材利用に大きく寄与できる可能性を持つ技術の一つである。しかし,これまでに原料として用いられて来た半固定材はR方向に圧縮を加えた柾目材のみであり,木目の美しさ等を最大限に生かすことが出来なかった。本研究では,2段階の圧縮工程を経ることにより陥入を生じることなくT方向へ木材を圧縮することを実現し,湿潤条件下において100%程度の伸び率を有する板目材を得ることに成功した。また,まさ目材および板目材の半固定材を成形し,これらを原料として木材単板からのスピーカーコーンの成形を試みた。0.4 mm厚および0.5 mm厚の柾目材を用いた場合80%程度の成形成功率を示し,板目材を用いた場合でも50%程度の成功率を示した。音圧周波数特性の測定の結果,これらが市販ウッドコーンに匹敵する音響特性を有することが示された。