2011 年 57 巻 5 号 p. 249-255
スギの縦切削における巨視的な切屑型と微視的なき裂挙動を検討した。スギを切削角が中位の加工条件(例えば,切削角が50°)において縦切削した時の巨視的な切屑型は,一定の切込み深さから,「先割れ」が現れ,切込み深さの増加に伴い,流れ型から折れ型に移行した。この時,微視的なき裂挙動を観察した結果,切屑が生成される段階では,刃先前方に位置する細胞間層や細胞内腔に面した放射壁にき裂が発生し,巨視的な曲げ破壊が生じる終期の段階では,複数の細胞にまたがって起こる破壊として,刃先の斜め前方に起こる傾斜破断と垂直方向に起こる垂直破断が現れた。これらの結果から,折れ型切屑が支配的な,切削角が中位の加工条件において,巨視的に観察できる「先割れ」の破壊現象は,主に微視的なき裂挙動における細胞間層のき裂が成長したものであることが考察された。