抄録
樹木の生存に水は不可欠である。水の多くは二次木部に存在し,蒸散や代謝に用いられている。二次木部の水の分布と移動は,その研究目的に応じて個体というマクロなレベルから,個々の道管,仮道管といった顕微鏡を要する細胞レベルまで様々なスケールの中で解析されている。本稿では水の分布についてはその定量的な把握のための含水率測定と,組織レベルでの定性的な水分布を捉える手法としてのX線顕微鏡法,cryo-SEM法,核磁気共鳴画像法,X線CT法について述べる。また,水の移動速度や経路を解析する手法として樹液流計測法と同位体法,染料注入法について解説する。各手法における測定原理とその有用性および限界を検討し,樹木を中心とする植物への適応により得られた知見を概説する。