ひき板を直交積層接着したCross-laminated timberパネル(以下CLTパネルとする。)を床などの水平部材として利用する場合,CLT層内せん断応力度分布は,各層ひき板のヤング率構成の影響を受け,直交層ひき板には木材繊維を回転させる方向にローリングシアーが作用する。一般に木材のローリングシアーによるせん断強度は,繊維平行方向のせん断強度に比べ小さいと言われているが,CLTに用いるスギひき板のデータは少ない。そこでスギひき板を用いた3層3プライCLTパネルを用い,合板の日本農林規格を参考に層内せん断試験を実施し,直交層ひき板のローリングシアー強度を求めた。ひき板のローリングシアー強度分布を用い,断面構成の異なるCLTパネルのせん断耐力の推定を試みた。また推定したCLT断面構成と同一の実大CLTパネルの逆対称せん断試験を実施し,せん断耐力の実験値と計算値を比較した。その結果,せん断力が作用する区間に配置されたひき板の平均ローリングシアー強度でCLTのせん断強度が決定するモデルでは,計算値に対し実験値は12%低く,せん断区間に配置されたひき板の最小ローリングシアー強度でCLTパネルのせん断耐力が決定するモデルでは,計算値に対し実験値は16%高い結果となった。