木材学会誌
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カテゴリーI
篳篥の蘆舌に用いられる葦(Phragmites australis)材の物性(第1報)
材内の密度分布と稈の横圧縮強度
中西 遼小幡谷 英一
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2016 年 62 巻 6 号 p. 259-265

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抄録

雅楽に用いられる篳篥のリード(蘆舌)には葦(Phragmites australis)が用いられる。蘆舌には淀川流域の鵜殿地区で採れる葦が最適とされているが,その理由は定かではない。本研究では,代替産地や合理的な選別法を検討する上で不可欠な良材の条件を明らかにするために,熟練者によって選別された葦材の組織構造,密度および横圧縮強度を他の葦のそれらと比較した。同一節間内で比較すると,上部ほど肉薄で密度が高かった。この違いは外皮の内側にある柔細胞層の厚さの違いによるものであった。良材と選別された葦材は,他の葦よりも肉厚でやや密度が高かったが,その差は僅少であった。一方,良材は他の葦よりも明らかに高い横圧縮強度を示した。葦の稈から蘆舌を作る際には,稈の一端をつぶさなければならない。そのため,薄くつぶしやすい節間内上部が使われ,かつ,横圧縮に対して壊れにくい葦材が選ばれるものと推察された。

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© 2016 一般社団法人 日本木材学会
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