木材学会誌
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カテゴリーI
木材の経年および熱処理による色変化
松尾 美幸 山本 浩之梅村 研二川井 秀一
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2016 年 62 巻 6 号 p. 266-274

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抄録

木材の色は経年により変化する物性の一つであり,審美性や劣化の指標としての観点から重要である。本研究では,科学的に年代を明らかにしたケヤキ古材を用いて経年にともなう色変化を測定し,既報の熱処理にともなう色変化やヒノキ材の色変化と比較した。その結果,L値およびb値は新材より小さくなり,熱処理にともなう変化と同様であった。一方で,古材のa値は新材や熱処理材のそれよりも大きく,経年と熱処理では異なる傾向を示した。反応速度論的解析によってケヤキ材の常温での色変化を予測し,古材から測定した色変化と比較したところ,ケヤキ材の経年変化は熱処理材から予測された変化よりも速く起こっていることがわかった。これらの結果は,経年による色変化と熱処理による色変化が同じ熱酸化反応であると結論づけられたヒノキ材とは異なる結果であり,樹種による経年変化への応答が異なることがわかった。

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© 2016 一般社団法人 日本木材学会
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