2021 年 67 巻 1 号 p. 20-32
近年,茶室における樹種識別調査と用材観解明の重要性が周知されてきている。本研究では,裏千家を代表する茶室でもある京都府京都市に位置する重要文化財裏千家住宅保存修理工事において,63試料について光学顕微鏡および放射光X線µCTによる樹種識別調査を行った。その結果16種類もの木材が使用されていたことが判明した。中でも,咄々斎では,床柱や床框に珍しいマタタビ属(Actinidia)が使用されていることも判明するなど,当時の裏千家における茶室建築における木材利用,ならびに用材観の解明にむけて知見を拡充できた。