2021 年 67 巻 4 号 p. 178-187
近年では木質構造用ビスを引き抜き方向に耐力負担させるような設計が増えており,その引き抜き性能について理論的な裏付けに基づく設計手法の確立が求められている。ビスのねじ部を再現した三次元有限要素解析 (FEM解析) を実施し,繊維直交方向における引き抜きではねじ山の先端に引張応力の集中が見られた。FEM解析と実験での破壊性状を基に線形破壊力学を用いた繊維直交方向における引き抜き耐力推定式を提案した。推定式での算定値をスギ・ヒノキ・カラマツ・ベイマツの製材を対象とした引き抜き試験の結果と比較したところ,全体的に安全側の評価となったが実験値の傾向をよく捉えた結果となった。