2022 年 68 巻 1 号 p. 43-52
沖縄の伝統楽器である三線は棹が重要であると古くから言われているが,棹材として用いられる木材の科学的調査はあまり行われていない。さらに,近年これら木材の数が激減し,代用樹種を探す必要性も増している。楽器としての棹材の性能を工学的に評価する事で適正な材料選定が可能になると共に代用樹種の選定にも役立つ。本研究では棹材としてリュウキュウコクタン (Diosphyrosferrea) とイスノキ (Distylium racemosum),代用樹種の候補の一つとしてモクマオウ (Casuarina equisetifolia) の計3種について両端自由たわみ振動法を用いて動的ヤング率や対数減衰率を求めた。また,これらの材を用いて実際に三線の棹を製作し音色の評価も行った。その結果,特に減衰率において定性的に結果が一致した。これは原木状態での適切な棹材の選定指標の可能性を示している。また,代用樹種の候補であるモクマオウに関して,三線の棹材として利用できる可能性も示された。