2023 年 69 巻 3 号 p. 125-133
木質材料への制振性付与に用いる接着剤の接着性能向上を目指し,ガラス転移点(Tg)の異なるアクリル樹脂エマルション(AE)にアセトアセチル化ポリビニルアルコール(AAPVA)及びポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(pMDI)を混合した水性高分子-イソシアネート系接着剤(API)を試作した。接着剤のフィルムから動的粘弾性と吸湿率を,合板から引張せん断強さおよび木部破断率を測定することで,フィルム物性と木材接着性能の関係性を調査した。その結果,動的粘弾性では,AAPVAとpMDIの添加により,高温域で貯蔵弾性率(E ')の低下が抑制された。引張せん断接着性能は,室温付近にTgを持つAEで最高値を示し,AEへAAPVAとpMDIを添加することで大幅に接着性能が向上した。さらにE 'と引張せん断接着強さの関係性を調査した結果,多項式の近似曲線で決定係数R 2=0.876の高い相関が得られた。