木材学会誌
Online ISSN : 1880-7577
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69 巻, 3 号
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カテゴリーI
  • 佐藤 友紀, 松田 奈夕, 榊 郁子, 上原 健二, 工藤 真二, 林 潤一郎, 進藤 昌
    2023 年 69 巻 3 号 p. 109-116
    発行日: 2023/07/25
    公開日: 2023/07/27
    ジャーナル フリー

    スギ(Cryptomeria japonica)の木材は,建材や家具,伝統工芸品などに広く使用される。しかし,スギの葉は,ほとんど使用されることなく,廃棄されてしまう。本研究では,水を溶媒とする2段階温熱水パーコレーションによる秋田スギ葉抽出物の生理活性をin vitro試験とヒト皮膚ケラチノサイトHaCaTを用いた細胞試験で評価した。スギ葉の抽出液は,in vitroの抗酸化活性及びポリフェノール量のいずれも180 ℃抽出液が優れていた。また,HaCaTを過酸化水素や紫外線に暴露して酸化ストレスを誘導した場合に,80 ℃抽出液でも抗酸化性が認められたが,180 ℃抽出液の方が優れた抗酸化性を示した。したがって,2段階温熱水パーコレーションにより,特に180 ℃熱水抽出液中に秋田スギ葉における抗酸化性に優れた成分を溶出できることが示唆された。

カテゴリーII
  • 小川 敬多, 小林 研治
    2023 年 69 巻 3 号 p. 117-124
    発行日: 2023/07/25
    公開日: 2023/07/27
    ジャーナル フリー

    これまでの木質接合部のせん断性能に関する研究事例を見ると,部材同士に摩擦抑制を施さずに力学試験を実施する事例や,様々な処理により摩擦を発生させない工夫を施す事例が散見している。しかしながら,摩擦抑制処理が接合部のせん断性能の評価結果に及ぼす影響については不明であった。そこで,この影響の解明を目的に,ボルト接合部,釘接合部,ビス接合部を用いて力学試験を実施した。摩擦抑制処理として,接合具を緩く留め付ける方法と,テフロンシートとグリスを用いる方法を採用した。荷重-変位関係から,摩擦抑制処理を施すことで,試験初期の静止摩擦を抑えられていることを確認できた。また,接合具を緩く留め付ける方法では,試験初期の摩擦は十分に抑えられているが,せん断試験の進行にともなって摩擦抵抗力を発現する様子が明らかになった。摩擦抑制処理の影響は力学特性値にも顕著に現れており,特に,初期剛性は27~48%低下した。

  • 藤代 薫, 長屋 日奈子, 山田 雅章
    2023 年 69 巻 3 号 p. 125-133
    発行日: 2023/07/25
    公開日: 2023/07/27
    ジャーナル フリー

    木質材料への制振性付与に用いる接着剤の接着性能向上を目指し,ガラス転移点(Tg)の異なるアクリル樹脂エマルション(AE)にアセトアセチル化ポリビニルアルコール(AAPVA)及びポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(pMDI)を混合した水性高分子-イソシアネート系接着剤(API)を試作した。接着剤のフィルムから動的粘弾性と吸湿率を,合板から引張せん断強さおよび木部破断率を測定することで,フィルム物性と木材接着性能の関係性を調査した。その結果,動的粘弾性では,AAPVAとpMDIの添加により,高温域で貯蔵弾性率(E ')の低下が抑制された。引張せん断接着性能は,室温付近にTgを持つAEで最高値を示し,AEへAAPVAとpMDIを添加することで大幅に接着性能が向上した。さらにE 'と引張せん断接着強さの関係性を調査した結果,多項式の近似曲線で決定係数R 2=0.876の高い相関が得られた。

カテゴリーIII
  • 川合 慶拓, 石原 亘, 高梨 隆也, 大橋 義徳, 澤田 圭, 佐々木 貴信
    2023 年 69 巻 3 号 p. 134-139
    発行日: 2023/07/25
    公開日: 2023/07/27
    ジャーナル フリー

    直交集成板 (CLT) に面外方向への荷重が作用した場合,せん断応力が発生する。直交層ラミナのローリングシアー強度は平行層ラミナのせん断強度よりも低く,ラミナのローリングシアー強度の評価が必要である。しかし,カラマツラミナに関して,断面寸法の影響を評価した報告はない。本研究では,厚さ30 mmのカラマツ (Larix kaempferi) ラミナを用いて,60,80,100,120 mmの4条件のラミナ幅および幅60 mmのラミナを二枚隣接させた試験体で圧縮型試験を実施した。その結果,ラミナ幅が大きくなるほどローリングシアー強度が増加する傾向が認められた。また,本研究におけるラミナの厚さに対する幅の比 (幅厚さ比) とローリングシアー強度の線形関係は既報値と概ね一致した。ラミナを二枚並べた試験体の強度は,幅120 mmの試験体より低い結果となった。

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