2025 年 71 巻 2 号 p. 67-77
近年の新型コロナウィルスの世界的流行は,住環境へのニーズにも大きな影響を与えている。スギ(Cryptomeria japonica) 材を建材(内装材や構造材)として活用する場合,材の物理・化学的性質によって様々な効能を示すことが知られている。これまでにC. japonicaに関する日本農林規格 (JAS) が制定した法律は,材面の品質や保存処理を規定するようなものであり,人に対する材の生理的な機能性について述べる際に不可欠であるテルペン量に着目した定量分析方法は,現時点で存在しない。そこで,C. japonica材の付加価値を高めるために,材に含有する機能性関与成分を対象とした定量分析法のJAS化が有効な手段であると位置づけた。JAS制度を活用し,スギ材の更なる需要を高めるための端緒として,本研究では,ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて,材に含有される機能性関与成分の定量分析JAS法案を開発した。