2015 年 12 巻 p. 5-17
2010年頃を境として,時代状況に変化の兆しがみられる.先進諸国では,
これまでのような経済成長が望めなくなり,また新興国は発展している.
こうした傾向は,資源の有限性を喚起し,そして地球温暖化,環境破壊が
進んでいる.単なる成長ではなく,人びとの幸福のあり方が言及されるよ
うになっている.脱物質志向,脱成長も大きなテーマとなっているといえ
る. しかし,振り返ると1960年代からの「福祉」や「生活の質」への着
目といった点を指摘することができる.本稿の目的は,この半世紀にわた
る「福祉」,「生活の質」,生活水準,暮らし良さ,そして幸福度や幸福感といっ
た「望ましさ」に関する数量化の歴史を回顧し政策的有用性について検
討することにある.
具体的には,第一に,近年の幸福度をめぐる大きな動向について素描す
る.第二として, 1960年代からの社会指標運動に言及し,その沈静化を
確認し,さらに, 1990年代のニュー・パブリック・マネジメントにおけ
る政策評価の指標体系に注目する. こうした検討を踏まえつつ,第三に,
現在の幸福度研究の盛隆.及びそうした動向が政策問題に繋がるかという
点について検討する.第四としてここでは主観的指標を中心とした指標
体系(試案)に焦点を合わせ,さらに第五として,幸福感や満足感などの
主観的指標と人びとの関係性,関係形成能力などとの関連について,見取
り図を描くことにしたい.