本講演の主題は,福祉社会学の研究において,もう一度社会学や社会科学の
問題関心を意識しながら取り組んでみてはどうかということである.福祉社会
学の登場は,業績主義が浸透する社会において,1960 年代以降,性・年齢・
障害・エスニシティなどの属性要因に基づく問題が浮上してきたことと軌を一
にするといえよう.その際,人間の内なる自然への関心として福祉社会学が,
人間の外なる自然への関心として環境社会学が登場したと位置づけることがで
きる.福祉社会学が取り組むべき現代の社会変動として少子高齢化,リスク社
会化,グローバル化の3 つを考えることができる.それらの事象を分析するた
めの社会学的認識をあげるならば,中間集団の栄枯盛衰,経済と社会への複眼
的視座,資源配分様式(自助・互酬・再分配・市場交換),関係性の社会的配
置(親密性・協働性・公共性・市場性),社会科学の原点としての規範と欲望
の相克・相乗などの論点が考えられる.21 世紀に向けては,生とグローバル
の対比,福祉社会や共生社会などの理想モデルの探索,公共社会学との接点の
検討などが福祉社会学の課題となっていくであろう.