2018 年 15 巻 p. 189-215
本稿の目的は,来所者を「就職に結びつける」必要性が増すサポステの事業
変遷下において,その支援職員が持つ支援観をインタビュー調査から明らかに
することで,今日のサポステが提供しうる支援意義を考察することである.
調査の結果,支援職員が来所者との立場の非対称性を排し,来所者の主体性
を重視する支援観を内面化している実態が明らかとなり,それは同事業の制度
的側面と,支援職員の主観的側面との諸要因から導出されるものであった.ま
たこの支援観を活用することで,支援職員は同事業の「評価基準とのせめぎ合
い」から生まれる「葛藤」を“ 合理的” に解消することや,来所者自身の自己
肯定感に基づいた「自己イメージ」や「自己理解」を「一緒に探す」ことが可
能となることが理解された.
そしてこの支援観より創出されるサポステの支援が,これまで多様な背景を
持ちながら自尊心を育み切れず,その社会生活において自身の主体性に確信を
持ち切れなかった若者にとって,自身の主体性を育み,社会的自立を実現して
いくための社会資源となりうることが確認された.
重ねて,サポステに来所する若者の自尊心を回復させることの必要性とその
支援意義が,狭義の「就職に結びつける」必要性が増す事業変遷下においても
強く想定されることが理解でき,来所者が自己肯定感を獲得していくプロセス
自体が,その「効果的な事業実施」のもとで見出されるべき重要な観点となる
ことが示唆された.