福祉社会学研究
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【自由論文】
介護福祉士の職業教育訓練による職務認識の差異
「尊厳と自立」概念に着目して
鈴木 由真
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2018 年 15 巻 p. 265-288

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抄録

本研究の目的は,介護における職業教育訓練(Vocational Education and

Training 以下,VET と表記)の差異による,介護福祉士の職務認識の違いを

明らかにすることである.介護の専門性に関する研究は幅広く行われているが,

人材育成の観点から介護のVET を扱った実証研究は蓄積が少ない.そのため,

現行のVET 制度がどのような職業的レリバンスを持つかを明らかにする必要

がある.介護福祉士は「養成施設ルート」と「実務経験ルート」の二つの資格

取得ルートがあり,また事業所内外のVET は統一的ではなく多様である.そ

のため,厚生労働省が定める教育カリキュラムの基礎概念である「尊厳と自立」

を参照軸とし,介護福祉士が受けたVET によって職務認識がどのように異な

るかどうか検証する.

 本研究では,養成施設ルート出身者と実務経験ルート出身者に対しインタビ

ュー調査を行った.調査の結果,養成施設ルート出身者とVET を手厚く受け

た実務経験ルート出身者は尊厳と自立概念を重視し,VET をあまり受けていな

い実務経験ルート出身者は時間効率を優先する傾向があることが分かった.ま

た,事業所の運営等に問題がある場合,前二者は職務継続意欲の減退が見られ

たが,後者は問題を消極的にであれ容認する傾向が見られた.今後は実際の職

務遂行のあり方や教育カリキュラム自体の妥当性を問い,職業的レリバンスの

内実をより明らかにすることが課題となる.

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