本論文は,身体接触を伴うケア実践において性別がどのように話題化され,
扱われるのかを焦点とする.扱うデータは,2011 年3 月11 日の東日本大震
災以降,仮設住宅等でなされてきた足湯ボランティア活動を使用している.ケ
ア実践における身体接触は,親密性を提示しうる一方,プライバシーやセクシ
ュアリティに抵触する可能性があり,両義的なものである.本論文では,こう
した背景のもと,参与者がどのように相互行為を処理していくのかを解明する.
相互行為の解明に当たっては,会話分析の手法を採用する.とりわけ重要なの
は,身体接触を通じて参与者の性別がどのように話題化されるのかという点に
ある.本論文において筆者は,参加者が性別の話題化を,「冗談」として構成
する実践を記述する.この実践により,参与者たちは,ケアの両義性という問
題をシリアスに扱うことを回避し,円滑に相互行為を進めているのである.