2019 年 16 巻 p. 55-71
戦後の福祉国家において,障害者は施設収容というかたちで排除されるか,
「二流市民」として周辺化された存在であった.このような障害者のシティズ
ンシップは,障害者を「他の者との平等」とすることを求める国連障害者の権
利条約によって,大きく前進しつつある.しかし,それによって,これまで周
辺化/排除されていた障害者のシティズンシップが完全に確立したとは言い難い.
日本においては,脱施設ですら道半ばであり,福祉国家としてその「完全な
成員」に対して生産と消費の義務を求めるがゆえに,地域で暮らす障害者たち
の多くもまた周辺化された存在から抜け出すことはできず,「善き二級市民たれ」
という自己責任論の圧力に晒されている.さらに今後懸念されることとして,
差別解消政策と運動に対するバックラッシュ及び新型出生前診断に代表される
「ソフトな優生」の広がりがある.
とはいえ,「持たざる者」の権利獲得運動はつねにそうやって進んできた.
楽観はできないが悲観するべきでもない.福祉社会学が貢献できることのひと
つに,エイブリズムに裏打ちされたマジョリティのシティズンシップ概念の再
構築がある.手がかりは,障害,ジェンダーとセクシュアリティ,貧困,エス
ニシティの領域を超えた多様なマイノリティの社会運動の交差・連携と学び合
いにある.