2024 年 21 巻 p. 193-217
2012 年の創設以降,放課後等デイサービスは事業規模を拡大し続け,社会的な存在感および需要を伸ばしてきたが,現場で支援者たちが直面するリアリティは十分にとらえられてこなかった.本稿では,行動療法的な発達支援の提供を謳う事業所に焦点を当て,語りの記述・分析を通して,支援者たちの意味世界においてどのような支援の論理が成立しているのか明らかにした. まず,支援者たちの意味世界において,「子どもの変容を目的とする支援」として,「特定の欠点の克服」を目指す支援の論理だけでなく,問題を欠点そのものとは別次元に置くことで,その直接的な克服ではない「代替的な発達」を志向する支援の論理や,“今以上に良くなる必要性”を下げることで,むしろ子ども自身が現状の欠点も含めて「自己肯定できるようになるという変容」を志向する支援の論理が成立していることが明らかになった.また,子どもの変容を志向せず,子どもの「ありのままの受容」を支援目的とする支援の論理や,欠点とされうる特徴を肯定的にとらえることによって,「その子どもの“よさ”の維持」を志向する支援の論理も見出された. そのうえで,発達支援として一般に期待される支援観に限定されない複数の支援の論理は,一見すると,変容をめぐって相反する支援観であるが,支援者たちの意味世界において,それらは複層的な論理構造を成しており,それによって併存していることが明らかになった.