NPO 法人茨城依存症回復支援協会(IARSA:Ibaraki Addiction Recovery Support Association)は,茨城 DARC の回復プログラムに乗れず,自立生活が直ちには難しいとされるメンバーに,安心して暮らせる場を提供することを目的に設立された.メンバーには多様な生活課題があり,運営上の課題も存在するが,概して生活は安定している.他方で,「老い衰えゆくこと」への対応は今後の大きな課題として浮上している.
本稿は,薬物依存に統合失調症や発達障害などの精神障害が併存する併存性障害を対象に,IARSA でのフィールドワークから得られた知見に基づき,「老い衰えゆくこと」とその支援のあり方について予備的考察を行った.その結果, IARSA はメンバーが「老い衰えゆくこと」を生きられる場として機能しており,その基底には状況に即した微調整を重ねるケアのロジックに則った実践があることが示された.
他方で,本稿の対象範囲に限っても,「老い衰えゆくこと」の進行に伴い,居住確保・地域移行・医療や福祉資源へのアクセスにおいて社会的排除が生じやすく,その応答が IARSA に偏在しやすい構造も明らかとなった.すなわち, IARSA で「老い衰えゆくこと」は可能である一方,留まらざるをえない状況が社会的に再生産されうる.ゆえに,政策・制度設計においては,薬物依存および併存性障害を有する人びとが「老い衰えゆくこと」を前提とし,長期的な生活支援を見通す検討が不可欠である.