本論では,社会分析としての福祉社会学の可能性について,主に時間軸の視点から考察する. 2003 年創設の福祉社会学会は,固有の理論や方法論の確立を前提としたものではなく,人口減少や家族の小規模化といった社会変動に伴う多様な福祉課題への社会学的分析の要請を背景として成立したともいえる.理論と方法の多様性こそが,複雑化する福祉課題への対応を可能にしてきたのではないか. 社会分析としての福祉社会学の役割は,人々の生活構造を把握し将来展望を提示することにある.しかし,人口減少率等の指標に基づく将来予測へ過度に依拠することは,現に生活が維持されているという実態の軽視につながりかねない.過疎地域の高齢者は統計上は,ひとり暮らしでも他出子による支援など多様な関係性に支えられており,こうした実態を踏まえた現在の課題と将来の予測的課題の峻別が求められる. 鹿児島県伊仙町は,高出生率を維持しているが,人口自体は減少している.高出生率という一時点の事象を静態的に評価するのではなく,子どもの成長や定住過程を含めた動態的把握が必要である.評価者の視点と当事者の生活論理とは乖離している可能性があるという認識を持つことが,分析の妥当性を担保するといえよう. こうした時間軸の視点を組み込むことで,生活構造の動態的変化の把握が可能となる.研究者の視点と当事者の生活論理との関係を検証し続けることが,福祉社会学研究の発展に資すると思われる.