福祉社会学研究
Online ISSN : 2186-6562
Print ISSN : 1349-3337
自由論文
介護職の「専門性」に対する認識と評価
介護老人福祉施設の場合
吉岡 なみ子
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 8 巻 p. 105-126

詳細
抄録

本稿の目的は,介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)に勤務する介

護職員に対するインタビュー調査にもとづき,職務の「専門性」の認識と

評価の認識の詳細を明らかにすることにある. 現在でも介護職の職場環境

は厳しいにもかかわらず,専門性の向上への要求はますます高まりをみせ

ている.だが,専門性を高めていく主体である当事者の意識については,

これまでほとんど等閑視されてきたといわざるを得ない.

本稿の調査では, 日常的ケアのスキルを磨くことや利用者の内面を深く

理解すること(の他に),ケアの感情労働の側面に「専門性」 を見出して

いることが明らかになった.「専門性」についての認識を成り立たせるロ

ジックは,利用者からの評価・承認がなされていること,社会一般が承認

する専門職のイメージに適合的であること,同僚からの能力に対する承認

などであった.これらは,ケア労働の細分化の進展や市場論理の導入,要

介護高齢者がもっ家族への期待の不充足など,近年の施設環境を取り巻く

さまざまな困難を背景として意味づけられたものと言える.町市場の合理性

は, 業務の細分化のみならず,専門職を成り立たせるための合理的な仕組

みの整備も同時に進めるが, このことが不適切な形で負荷され,ケアが単

なる肉体労働になることで, 施設入居者とケアの担い手双方の生活の多く

の部分が失われる可能性があるのかもしれない.

著者関連情報
© 2011 福祉社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top