2012 年 9 巻 p. 142-162
本稿の目的は,ひろば型子育て支援のスタッフが,自らの支援者として
の当事者性と専門性にどのような意味を与えているのかを明らかにするこ
とである.
これまで,ひろば型子育て支援のスタッフについては,彼女たちが子育
ての「当事者」であることの効用が注目の対象となると同時に,スタッフ
が「専門家」であることの必要性が提起されてきた.
これに対して,本稿でのスタッフによる語りの分析からは,第一に,彼
女たちの自らの専門性への態度は両義的な性質を持つことが示された.彼
女たちは「当事者」であるという観点、から自分の専門性を主張する一方で,
自らが「専門家」ならぬ「素人」であることをその実践を特徴づけるもの
としても取り扱っている.第二に,この両義的な態度は,利用者との関係
において「専門家」や「先輩ママ」という非対称性を合意するカテゴリー
を担うことには慎重を要するという実践的な理由からもたらされている.
すなわち,彼女たちは自分が「当事者」であることと結びついた一定の専
門性を備えていることを認識しているが,その専門性には「素人」であ
ることの専門性,つまり,利用者とスタッフの間に対称性を生み出すため
の非対称な工夫が含まれている.
ひろば型子育て支援における当事者性と専門性の強調は,いずれもこの
ようなスタッフたちの「素人」であることをめぐる工夫を看過するかたち
でなされるならば, ミスリーディングなものになるだろう.