福祉社会学研究
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福祉NPOの展開と福祉社会学の研究課題
安立 清史
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2005 年 2005 巻 2 号 p. 12-32

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抄録
福祉NPOが,福祉領域で果たす役割や機能を分析し,日本の介護保険や地域福祉を改革する潜在的な可能性を持つものであることを論じる.まずアメリカにおけるNPO研究の動向をサーベイし,ラルフ・クレーマーによるボランタリー組織の理論と分析枠組みを発展的に継承し,福祉NPOの機能を,先駆的機能(vanguard),改革/アドボカシー機能(improver/advocate),価値の擁護機能(value guardian),サービス提供機能(serviceprovision)の4つの側面から分析する.日本の介護系NPOでは,この4側面が機能していることを検証し,なぜ,介護系NPOではこのような先進的な機能が発揮できるのかを考察する.介護系NPOは,その形成過程において,地域の福祉ニーズに触発され,制度の枠の外側から自発的に形成されてきたものである.地域に根ざして,先駆的な活動を行えるのは,行政等の財源に依存する制度内存在ではなく,住民参加型在宅福祉サービスのように,必要に迫られた地域住民の支援と参加があったからである.そのようなボランタリーな活動が,NPO法と介護保険制度のもとで組織化され発展してきたのが日本の介護系NPOの特徴である.こうした福祉NPOの現状の持つ問題や課題とともに,福祉社会学としての調査研究課題についても論じて展望する.
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